シャールと餌木は日々を共にしています。専属の補佐ですから。お互いがお互いをよく思っているからでもあります。気があいます。とても甘くされています。(大事にされていますとはあえて書きません)楽しく過ごしていました。シャールにとっては薔薇色の毎日でした。餌木はシャールの勘違いを、恋情を、拒否しませんでした。否定しませんでした。下手くそに引き伸ばしていました。口が滑ったみたいに告白したシャールの目を、餌木は見ませんでした。驚きもしませんでした。いよいよ言われてしまったかみたいな顔をしました。餌木はシャールに何も言わずに左薬指を見せました。シャールは餌木の素肌の手を初めて見ました 。細くて白くて可愛い指だと思いました。グローブの中指をつまんで、引っ張る仕草の時点でシャールは察していました。餌木はそのまま左手の甲を見せて、ごめんなさいとだけ言いました。左手の薬指のシンプルなリングを、シャールは見つめました。拒否しなくてごめんなさい、勘違いさせてごめんなさい。餌木はバツが悪そうにしていました。餌木はシャールが勘違いするようなことをしました。誰が見てもそう言うでしょう。餌木はそれからうんともすんとも言いませんでした。シャールはどうすべきかよく分からなかったのでとりあえず部屋を出ました。挨拶しなくても餌木は怒らないとわかっていたので黙って出ました。シャールはオフィシャルとアンオフィシャルを混同していましたしそれでも仕事は続けられると思って告白しました。初めて恋をして、恋をしていることを否定されなかったので告白をしました。初めて添い寝をした次の日の朝、餌木がシャールにキスをして、その日の昼の告白でした。間が悪かったか考えましたがそうとは思えません。シャールは自分が悪いとは思えません。シャールはしばらくは餌木の部屋に入りたくありませんでしたので、餌木の部屋の前の廊下に転がって拗ねてみました。しばらくふて寝していたら通りがかったレクトに蹴られました。つまずきましたと言われたので、ゆっくり起きて、ゆっくり座り込んで、レクトを睨むというほどでもない顔で見上げてみました。レクトは無表情でシャールを見下ろしていました。先輩が何してるのか僕は聞くべきですかと問われましたが、聞いてほしいわりには聞いてほしくなかったので何も言いませんでした。私的な感情で仕事をボイコットしてると見て間違いないですかと問われましたが、何も言いませんでした。レクトはしゃがみ込みました。シャールの顔を真っ直ぐに見ました。実はシャールは、レクトの目線が得意ではありません。

「僕、餌木さんに用があるんです。退くか、これ餌木さんに渡すかどっちかしてください。仕事終わったら話聞きますから。」

餌木の部屋には戻りました。レクトに渡された封筒を持って。仕事に戻りました。仕掛けの仕事を続けました。むすっとしてたら餌木に撫でられたので、シャールは今までしなかったことをしました。餌木の手首を掴むことと、餌木を睨むことです。「好きです。が、それに応えなくてもいいです。」そう言って、餌木には撫でた手を下ろしてもらいました。餌木は何も言いませんでしたが何か言いたそうでした。その後もおとなしく仕事を進めました。全部終わる前に、早く帰りました。早めに帰されたのです。帰ったら、聖とグレブがベランダでタバコを吸っていました。二人ともどことなくイライラはしていましたが、シャールには二人のイライラが、なんとなくキラキラして見えました。血行が良く見えました。なのでシャールもタバコか、なにか、したい気分になりました。が、シャールはタバコがすきではありません。家にはレクトもいたので、餌木に振られたことを話しました。レクトはそうですかとしか言いません。シャールはいつもレクトを人間の頭数に入れていないきらいがあるので、鏡に話しかけるみたいに、いらないことまで言いそうになります。明日から餌木さんに優しくしなくていいと思いませんかと聞きそうになりましたが、口だけ開いてやめました。あほヅラ呼ばわりされたらレクトのこと殴りかねなかったので、すぐその顔もやめました。明日ウスルにも話そうと決めました。