手紙が見つかったからです
今は地面は彼が……建屋は彼が……
オーナーは本当は何も持たないの
ただ地主が所有をしないというから
それを持っているように見せることにしただけです
握手をしました
結婚もしました
結ばれるために結ばれることを
彼は了承しました
「自分はもう結ばれたから、いや、解けたから」
グレブはいつも通り笑っていて、照れくさそうでもあります
理由があって所有した桃源郷は
その理由を失っても十分愛されました
だから
だったら、
勿体無いではないですか
水槽を見つめる二つの影が暗闇の中の光に照らされて微かに輪郭を浮かび上がらせました
「君は僕のこれが好きなんですね」
餌木は首を振ります
好きなのではないの
どうしても掴まなければならなかった時に
掴んだ手の持ち主がこの中にいるの
その手を掴んだというのは
とても悔しいことでも、とても愛しいことでもあったの
「だったら君も入る？本当の意味でオーナーではなくなるけれど、きっと●●になれる」
その時グレブという名前だったのかすら曖昧なグレブは言いました
餌木は
どちらにもなりたいのだからその質問はおかしいと思いました
中に入ったからと言ってハンドルを手放したくない
外にいるからと言ってはなればなれになりたくない
餌木は胸を掻き抱きたい思いでしかし努めて落ち着いて答えました
「私はなにもかも、ぜんぶを所有するわ」
水槽を指輪をした手で撫でるから、カツカツと音がしました
240312