こんなに父の墓に長く向き合ったことはありませんでした。しかしこれは墓を暴く為です。こんなに墓に頭を下げたことはありませんが、全ては墓を暴く為です。この時はいつかくると予想していました。予想に向き合ってきたかは別ですが。知っていたと、心で繰り返しました。ここは眠る為の墓ではありません。出会う為の墓です。父はカケラもここにはいません。椣原イミヂが椣原イチデに愛された日々を無にしない為のハリボテです。ここに眠るのは愛されていたイミヂです。何かで穢れたイミヂが最早たどり着けない、清らかに生きていたイミヂです。イミヂは、自らの穢れを認知できません。それ程までに穢れているのです。”清らかに生きよ””清らかに生きよ””清らかに生きよ””清らかに生きよ””清らかに生きよ”イミヂは掘りました。土になるために。
お手を繋ぎたいと願ったのを思い出しました。今も願いました。想像の中だけは、想像の中でだけはとうさまと手繋ぎたかったな。無理でした。さあ僕よ解放されろ。僕は念仏がうまいんだ。