聖が気に留めるものと言えば、聖の手の内のすべてに対してですが、聖の認識の網はそう広くありません。そのこわばりを自覚しているから、聖は絶えず憤って、たばこが増えるのかもしれません。この世で闘うもの、それを鼓舞するものの選別に聖は赴きました。選別は、鼓舞するものを指導する学校で開かれます。学校は駅とつづきになった施設で、ガラスに覆われていて清潔で、ピリピリしていました。学校にしては大きく厳か過ぎました。急に成長をしたのです。聖は感慨を以ってそれを見上げました。学校は駅を取り込もうとまでしていました。鼓舞する者が、闘う者を取り込もうとまでしている現状をあらわしているようでした。いいえ、まさしくあらわしています。これから、かの選別用の舞台にて、よりわけをされる見習いの見習いが道に迷っているのを、聖は助けました。道のおぼつかないのを、背中を押して示しました。その見習いの見習いがいよいよ演舞をするところにも聖はきちんといて、聖はきちんと見ていましたが、それは他の演者の演舞を見るのと、同じようにでした。この世はいつからこうも複雑に間延びしてしまったのでしょう。本日5本目のたばこを、岸理のつけた火で吸いはじめました。

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