ラバランがナリエのお部屋にいる、それはアンバランスといえばアンバランスなのですがないことではないのです。ナリエの傘持ち、いわば犬が地べたに座り込んで几帳面に数える札束を、頭の悪そうな別の犬がかたっぱしから破いて散らかしていくのを横目に見ながら、札束の山でできた土手みたいなものをラバランが長い脚でまたいで超えました。ナリエはその向こうに鎮座していました。「お前に見せたいものがあるんだよ」そう言ってナリエが見せてくれた、ラバランの好みそうな、憧れそうな、頭の悪そうな、そして良さそうな、暴力のうまそうな、あつらえられた子供には目もくれず、ラバランはナリエをまっすぐ見て、ナリエさんはすごいな、と言いました。ナリエの部屋は真紅の灯りに照らし出された暗い広いコンクリの個室で、冷たい壁に床に似合わない豪華でややこしい紋様の絨毯、ビロードのふかふかのソファ、犬、犬、犬がいます。そしてラバランもいます。ナリエの部屋の調度品として相応しい服を選んで馳せ参じました。ラバランは見せたいと言われた子供をまだ見ません。「ナリエさんのことはお仕事抜きで、尊敬しています。」ナリエは高らかに笑いました。お仕事抜きで?お仕事抜きのラバランというものがこの世にあるとしてそれがどの程度の規模のものなのでしょう。「お前のな、お仕事ですからは、信用できるんだよ。」ナリエはおたばこを使って、目の前の札束の山に火をつけました。ちっさな光はうまい具合に札の柔らかいところを瞬く間に食いつぶし、束を包み込んでいきました。次第にぼうぼう燃えました。炎はラバランに少しずつ近付いていきます。ラバランは炎が苦手です。それでも一歩も動きません。汗が伝っても、赤い光が肌を照らして、熱風が金色の髪を持ち上げても。尊敬する、ナリエさんの前ですから。違う、お仕事ですから。お仕事しかできない大人のラバランは、自らがそこで炎に巻かれて黒焦げになって終わろうとも、一歩も動かないでしょう。お仕事ですから。ナリエは気分がいいのです。機嫌がすこぶるいいのです。炎はラバランの髪の束の一部を燃やしてしまいました。あつらえられた子供が声をあげました。子供にとって炎はとても怖いものです。大人にとっても炎はとても怖いものなのだと、誰でもわかってしまうような表情をラバランがしそうになった時、ナリエの犬は札束に水をぶっかけて鎮火をしました。ナリエにかからないように。ラバランがびしょびしょになる角度で。ラバランは目を細めて息を吸って、びしょびしょの顔を、髪を、立派な仕立て、繊細な模様のついた袖口で拭いました。ナリエに頭を下げてから、お礼を言いました。ナリエはもうラバランに興味を無くして、身体ごと真横を向いて、もう一本目を吸い始めていました。

190925