ウスルはシャールを、想定よりあっさりと欺くことができている自分に少し驚いていました。ウスルの口は、ラバランを、ただただ多くのファイターの内の1人のファイターとして評価し、現実的に褒めました。ウスルはいつも通り話しながら段々と気付きました。ウスルはラバランのことを私情?を抜きにして、ファイターとして少しだけ特別に評価しているのです。戦い方が好きでした。ラバランがプライベートでの関わりのない只の仕事仲間に過ぎなかったとしても、こうしてシャールなんかと、彼の話はしたのでしょう。幸いウスルは、シャールへ誤魔化すに有り余るほど、ラバランの戦い方へ冷静な目を向けているようで、シャールもただ同業者の戦いの型を評価して、楽しそうにしていました。シャールは楽しそうに、僕も彼のスタイルは好きです。と言いました。ウスルは頷きました。ウスルは、今度プライベートでラバランとお茶でもしませんかと言うシャールに、そういうのは苦手だから、と答え、それ以上会話が発展しないような工夫をして、シャールとはその日、お別れしました。
ラバランに汗が伝う光景も、初めこそ見てはいけないものを見ている気になって律義に目を逸らしていましたが、今はラバランさえこちらの視線に気づいていなければ、その汗を目で自由に追いかけることくらいはできます。ラバランはお風呂に浸かりながら、早めに出て体を拭いているウスルを見るのが好きだと言いました。ウスルは返事ができなかったので、背を向けてそのまま体を拭いていました。しばらくしてラバランが、君が、私のファンってほんとう?と聞きました。ウスルはやっぱりラバランを見ることができずに、銀色のドアノブに手をかけました。少しはそのままでいましたが、ラバランを置いてバスルームを出ました。目を合わせることはできませんが、ラバランに伝う汗を見ることならできます。