4月13日 7:10 三堂駅 

「おはよ」
「はよ」
「おはようございます」
4人もいると朝から賑やかなものです。さっそくこんなに友達ができるとは思っていませんでした。
「今日1時間目体育だよ」
「おしまいだわ」
「何すんの?」
「知らん」

7:20

三人って幼馴染ってことだよね?」「そですね。幼稚園から一緒だから」「ずっと仲良しでいいね」
「はは〜」
氷室くんがおどけた苦笑いをする。「ずっとなんもなく仲いいわけじゃないですよ。いろいろあって今があるだけ……」
「何もないだろ」
「ないですね」
「ちょいちょい喧嘩したでしょ」
「三人が?」
「浩二と正司が」
「おかげで喧嘩強くなったでしょ?」「全然ですけど。しょうもないことで衝突してその度俺のこと言い負かしてただけじゃん」
「それより氷室と俺の妹の方がバチバチに喧嘩してたよ」
「妹いるんだね国丸くん」
「まあ」
「千鶴子さんね」
「国丸の躾がなってないんですよ……」そういえば、県くんには妹さんがいるとのことでした。「県くんの妹さんも幼馴染ってこと?」
氷室くんと県くんはうーん、と言い、石田くんはまあ、との反応です。
「小学生の時とかはまあまあ遊んでたけど……中学上がってからはあんま一緒に遊ぶとかはなくなったかも」
「妹君(いもうとぎみ)、僕と画塾一緒だよ」
「妹君(いもうとぎみ)、正司の悪口すごいよ」
「ツンデレよ。ケーキもらったことあるし」
氷室くんが降りる港里宮駅への到着を知らせるアナウンスが流れました。「あ~あ、ついちゃった。じゃあ、またね」

8:00 津ばき駅

学校までの坂道も会話しながらだと気軽です。
「氷室くんって画塾行ってるんだね」「らしいよ。美大目指してる?んだって」「へぇえ、進路のこととか全然考えられてないや。えらいなぁ」「あいつ、美術の学校だし画塾行ってるしで、ちょっと世界ちがうけど……いーな。進路確定じゃん」
県くんは進路に話が始まってからずっとなんとなく憂鬱そうに見えます。石田くんが感心したような表情をしている「2年生になったら進路のこと考えなきゃならないんですね。あっという間だろうな」「ええ~~~~~~~いやめいやめい。大丈夫。進路のことなんか微塵も考えてないから」
「そういうもんですか」1そういうもんだよ2県くんはそうなのかもね

午前授業 1体育/2ライティング/3物理・生物/4日本史/

12:50 昼休み 
県くんとのごはんもすっかり当たり前になりました。休み時間は携帯の操作が許されていますから、氷室くんにでも片手間に連絡をしてみることにします。県くんは私の様子を見ながらゼリー飲料を少しずつ飲んでいます。「県くんの写真送っていい?」「正司に?ごはんだけならいいよ。俺はやだ」仕方がないので、県くんのごはんのゼリー飲料と県くんの手を撮影して氷室くんに送信します。「返信早。何してんだアイツ」何してる?デッサン。早弁して課題の続きしてます。終わらなそうで……大変そう。今日も一緒に帰れる?今日はだめなんだー 水曜と木曜は画塾があります 県くんも一緒に画面を見ています。ケータイの画面を見てへぇーと声を上げた私を県くんが見ます。その県くんをなんとなく見ようとしましたが目は合いません。彼には目を逸らす癖があるようです。「氷室くんて週2回も画塾行ってるんだね」「1年の夏休みんときに始めたんだっけかな」結構しっかり絵の勉強をしてる子ということです。

午後授業 5英語/6LHR/7総学

-LHR

もうすぐ次のLHRです。チャイムの2分前くらいに江木先生が教室に入ってきました。見慣れないパンフレットの束らしい荷物を持っていて、たまたまドアの近くにいた私と県くんにその束を渡して配るように言います。「なんですか?これ」私が問うと
「遠足のお知らせ」
と存外優しい声色で先生が言いました。
「えーっ」
県くんが嬉しいのかめんどくさいのかわかりづらいリアクションをしながら、パンフレットの束を列ごとに配り始めるのでした。

///

「嬉しいお知らせでーす。18日は遠足です。校外学習ね。いいわね、さっそくイベントで。」
生徒たちから、わーいと歓声があがります。
がやがやとなったクラスをそのままに、餌木先生は校外学習の予定の書かれたプリントと目的地のパンフレットが手元にあるか確認するよう呼びかけました。
パンフレットには「華宝山峡民族資料館かほうぜんきょうみんぞくしりょうかん」とあります。
「今回は、1年、2年合同の校外学習です。到着して最初の、映像学習以降は敷地内で自由行動だから。別に1年生と合流してもいいわよ」
「ただ、1点絶対守ってほしいんだけど、」
ちゃんと聞いてね。と先生が念を押します。
「最近熊の目撃情報があって、一部施設が閉鎖されてます。プリント見て、下のとこにあるマップに色でマルつけといて。今やって」
するとあちこちから生徒が筆記具を取り出す音がします。
「立ち入り禁止の表示がある区画には絶対に入らないこと。その他、食べ物をそこらに放置しないこと。食べ物のゴミは必ず持って帰ること。現地に着いても改めて言います」

下校時刻 電車内

「熊ってすげー怖いらしいよ」「へー」「」「」「一緒に回ろうね」「うん」「今日なんか公園行くんだろ」「近所の子と遊ぶ約束してるんだよね」「へー。知り合い?」「運動公園でお散歩中に知り合った小学生」「ふーん。面倒見いいな」「そう?県くんも来る?」「いや、いい。めんどいから」

17:00 三堂運動公園 

県くんは駅で降りて、そのままゲームセンターに行くとのことで、そこで別れました。公園に着くと、すでにいらはくんがいました。私が気付く前から遠くから手を振ってくれていたようです。お父さんらしい男性が、いらはくんの隣で頭を下げたのが遠目でしたがわかりました。私も頭を下げてわかるように挨拶してからそちらへ向かいます。「こんにちは」「こんにちは」元気そうでよかったと笑いかけると、いらはくんは笑い返す訳ではないのですが、警戒されていたり歓迎されていなかったりする訳でもないらしいのがわかる、ぎこちなくかわいらしい仕草をしました。「今日はお父さんと一緒なんだね」するとお父さんがふふっと笑うのでした。「私は、いらはさんのお家の家政夫です。新堂と申します」「失礼しました。親御さんかと。」「いえ。いつもいらはさんと過ごしてくださり、ありがとうございます」新堂さんは優しく笑う、柔和な雰囲気を持った男性です。40代くらいの風貌でしょうか。いらはくんは新堂さんの袖を引っ張りながら、反対の手で私を示します。焦りや照れが混じっているけれど明るい表情をしています。「和佳さんは、津ばき学院の学生ですって」「ほう。立派に勉学に励んでらっしゃる。進学校ではないですか」「いえ、そんな」「私も、そこに通えますか。ね、新堂」「もちろん。和佳さんくらい勉強なされば、いらはさんならきっと」新堂さんは

「いらはさんがどなたかと仲良しになるなんて、珍しいです」
「いらはさんは、学校ではお勉強がはかどらないようでして」「斎藤さんは、バイトはされていますか?」「いえ、今度カフェバイトの面接に行きます。」「そうですか」「よければいらはさんの勉強を家庭教師として見ていただければと思っているのですが、お忙しいでしょうか」「彼の両親ももしいらはさんのお友達…斎藤さんさえよければ、一度やってみないかとおっしゃっておりました」「は、はぁ。なんでまた」

夜だれか誘う 4/15土曜