学生イミヂには目標があった。
遺産の立体額縁の中にそっくりそのまま現世を作り、会えなくなった育ての親を小さな世界にて観測するのだ。
のちに観光地ブロキマナクが成立する、とある土壌が生まれる物語。

イミヂは、膨大な記録、とにかく本当のことをなるべく全部、閉じたシュミレーターの中に詰めました。船に名を付けるように、その閉じたシュミレーターに「ひじり」と名付け、観測しました。いずれ問いかけをするようになりました。名前のついたイミヂ以外の物体が、ここにはこれだけだったものですから。撫でてもみました。枠の中の世界は、外界の日取りがないものですから、いずれ、イミヂの感じる区切りでいいから、カレンダーを作らなくてはいけないかもしれません。

ひじり、御機嫌よう。ひじり、には何か見えますか?
見えるってわかるのですか?
いく日もいく日もでした。必ず小さな世界に問いかけました。
その世界に父みたいなのは生まれましたか?
僕は?
僕はどのようにして?
似た事例はいくつありますか?
人物相関は?
その間もイミヂは事実であるならば、どんなに当たり前の事象でも、どんなに稀有な事象でも、上書きを続けました。五感は使わずに。

長い時間を掛けました。カレンダーをつくるのを忘れていたので、1時間とよく似た1万年かもしれません。
膨大な情報を栄養にして、自分の体に見合わないページ数を備えた異次元の書籍が花開くように、圧縮され点に近い原型をとどめていた種から、宇宙の編みレースが無限に湧き出るように、
花のように、
濁流のように、
ひじりの中で弾け、満ち満ちていきました。
父を観測しようと始めたものですが、父のことなんて頭から消えました。
信じられなくて、嬉しくて。抱きしめられないひじりを抱きしめそうになった、その喜びと言ったら!

161031