天使におちろというなれば

天使は完全なものである。何かが欠けていたりしない。天使は天使という枠組みに対し不足も超過もない。だから天使なのである。usuruは天使ではない。しかし天使に近き者である。「天使の学校」に属する学生である。学生は天使に近き者であり天使に満たない。中に天使に近くすらない者が一人だけあった。大層不真面目な男であった。天使を養成するという学校の存続理由を脅かす存在であった。天使は完全なものである。何かが欠けていたりしない。usuru、及び学生は完全に成るべくしてここにいる。よってusuruは「この男がここにいる」それだけで、自己の役割を全うしなければならぬ、と体が動いたものだった。端的に言うとusuruはこの男を殺そうとした。いてはならないことが明白だった。二度殺し損ねたのでやめた。usuru、及び学生の為の学び舎に、その男がいる理由について、usuruの殺人未遂があってすら、説明はなかった。不真面目な男には名前はなかった。「名前のない天使、と呼んであげなさい」と高位天使はusuruに諭した。 「許されざることをしてはいけない。同じように許されざる者は存在してはならない。生んではならない。生まれたのなら、消さねばならない。」それが天使たれと教育上叩き込まれる道理であった。しかし学校は「許されざること」を黙認していた。それは名前のない天使に始まり、あらゆる場面で露見する。usuruは学校で完璧な天使を生成することは不可能だと見定めかけていた。あと3日観察して仮定が確信に変わった場合、道理に基づく決行を成す算段であった。「許されざることをしてはいけない。同じように許されざる者は存在してはならない。生んではならない。生まれたのなら、消さねばならない。」。3日は静かに経過した。完全な天使などここにはいない。定義に則るならば、教えを説く高位天使すら天使ではない。故に天使を定義する文言に従うのならば、天使はこの世にひとりもいない。usuruが学び舎に来て7日間で結論が出た。 usuruは学生含めて全ての天使が死ぬのを見届けた。許されざることをしてはいけない。高等だと謳われた天使の数々も、天使に満たないusuruにより死ぬ存在であった。殺した天使の肉体は、間も無く融解をはじめた。肌から溶けていくもの、頭から溶けていくもの、体内が空洞になり陥没していくもの、どの天使もなにもかも、どろどろに溶けて失せた。最終的には、全滅した天使を見渡して、唯一消えない亡骸を見下ろした。usuruは生まれて初めて混乱を経験した。溶けぬ亡骸が名前のない天使であったからである。名前のない天使こそ天使であった。結果が物語る事実であったので、usuruは事態を粛々と受け入れた。定義上天使であるかどうかではなく、天使を定義する文言の方を疑った。名前のない天使はusuruに死ぬ間際、言葉を残した。 ごみばこに こたえがあるか あ ごみば こしか 応えてくれ ない くらい ご みまで おちろ 天使におちろと言うならば、意味するところはひとつである。usuru は堕天の方法を知っていた。なのでそれを行動に移した。