ウスルの部屋の本棚を、レクトは興味深いと感じていました、レクトの知る数少ない本棚の中で、最も自分の興味に即しているとウスルに伝えました。ウスルは部屋に誰も入れない、と聞いていました。ウスルが見せたい本があると言って部屋にレクトを招いたので、本棚を堂々と見る権利が自分にあると理解していました。レクトにとってウスルの本棚を堂々と見る権利は恩恵でした。ウスルは見せたい本だと言った昆虫図鑑と、子供百科事典と、医学書、医学の論文と、哲学書と、少年漫画を本棚から抜き出して、机に積みました。ウスルは知っていました。本、書物、メモ、文字で書きつけられた思いとか過去とかは、統制の下にあります。しかしその本たちにはぱっと見る限りハンコが見当たりませんでした。ウスルは、レクトには学びが似合うと感じたのと、話ができると思ったので、本を開けました。レクトは本を開いてウスルが指さしたり、語ったりした箇所の意味を、どれも滞りなく理解はできませんでしたので、とても念入りにたくさん質問をしました。ウスルは根気よく教えようという気概と、ウスル自身の教えることへの自信の無さの間をとって、そこそこ丁寧に解説しました。