黄色く見える陽光が窓から差し込んでいました。餌木の部屋の絨毯はまた新調されています。餌木は極めて手際よくシャールの髪を整えました。シャールは座っていて、餌木がその後ろに立っていて、シャールの傘持ちが髪の落ちるのをはいつくばって食べるのを、餌木は足でさばいて立ち位置を変えなければいけません。シャールは髪を切られるのが下手くそとしか言いようがない態度を示していました。シャールは故意に窓の外をしきりに見ようとしました。窓の外の何かを見るためではありません。餌木にきょろきょろしないでと怒られたいからです。耳切っちゃうわよ、と。頭を真正面を向くように動かされるたびにむすっとしてみせたりもしました。 せっかくむすっとする権利があるのならむすっとしようというだけです。餌木の声は落ち着いていて、静かでした。シャールは餌木の声が好きでした。高くて上品で媚びていて小さい。シャールはずっと同じ髪型で何シーズンもまたいで生きていました。餌木によって生まれ変わる気がしました。餌木のことは大好きですが、生まれ変わることには大きな抵抗がありました。死体を積み上げてでも、従来の自身にすがりついていたくらいです。餌木の軽快な手捌きを音で感じていたら、いつのまにか眠っていたので、シャールは新しい自分に突然出会うことになりました。いざその頭をしてお外に出れば、みんなに驚かれました。評判は上々で、賢そうになったと言われました。むすっとしましたが、しては見せませんでした。みんなは餌木ではないからです。

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