シャールは今日もゲストなんて知らない
シャールは今日もお暇です
いつもの時間に起きて
いつもの支度をして
いつもの服を着て
お茶を沸かして水筒に詰めて
サンドイッチをしておくるみにして持って出かけることにしました
日記は持っていかずにね
シャールはお散歩が大好き
キャストのおうちの並ぶ街を抜けて
海を眺めながら丘を越え
赤い手すりのついた長い階段を登って
青い原っぱにつきました
そしてきょろきょろとして
どうやらいいことを思いつきました
これまできちんとした道を通っていたシャールですが
ここからは区画を隔てるための庭木を無理矢理通り抜けることにします
長い脚を庭木にこすりつけて
服に小さな葉をいっぱいつけて
庭木の隙間をやっと通り抜けることができそうな次の瞬間
「なにしてるんだ!」
シャールは腕だのシャツの背中のところだのをめちゃくちゃに引っ張る腕に強く引っ張り戻されて
尻もちをついてしまいました
「道をはずれるな」「いなくなっちゃうぞ」
そこにいたのはお友達のウスルです
ウスルはとてもじっとはしていられないような
心配で動いてしまうような顔と仕草をしています
ウスルは少しだけ泣きました
シャールはそれを見て泣いているなぁと感じます
「すぐに戻ってきますよ」
「おまえのすぐはおれにとったらすぐではないよ。それに、いちいちそんな風に亡くなっていてはなにかを崩すぞ」
さあ、おさんぽが好きなシャールはウスルの家に連れ戻されてしまいました
ウスルのシャールへのプレゼント、ケーキとお茶がそこにあります
シャールはフォークをもてあそんで
なんでついてきたんですか?
聞こうとしてやめました
シャールが扉でも門でも道でもまして窓でさえないところから飛び出して以前ウスルは長らくシャールなしで過ごしたのです
シャールはおもしろい友人ですからいなくなっては悲しいし心配だというわけです
いつもは飲み物も食べ物もなく出かけるくせに、いろいろこさえたのが裏目に出ました
それをいぶかしんでウスルはシャールをとめたのです
たどり着いたとしても帰れない
整備されていない道を行くとはそういうことです
20240131